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新しいタイプのデイサービス |
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NPO「自立支援センターフィフティ」(青森)常務理事 |
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熊谷啓子 |
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実家の屋敷内に、明治初期に建てられた土蔵があった。しかしこの冬に、屋敷わきの坂道で作業をしていた除雪車がスリップし、塀を突き抜け土蔵を全壊させてしまったという。「蔵が壊されたのよ」と、実家の母から電話があったのは、その翌日の夜のことだった。「えぇっ、蔵が?」と言った瞬間に、黒くて重い引き戸の奥に漂っていた蔵の中の湿ったにおいが、私の中に久々によみがえった。それからひとしきり、蔵の中の古いタンスや長持ち、刀剣、古文書などなどの話をして、祖母の嫁入りのときの高島田を飾ったというべっ甲のかんざしを、「捨てないで、私にちょうだい」と念を押して、電話を切ったのだった。
翌朝、通勤前の慌ただしい時間帯に、電話が鳴った。こんな時間にだれだろうと思いつつ受話器を耳に当てると、「もしもし、私―あのね、蔵が壊されたのよ」と、母の声だった。「えっ?」と言って、私はとっさに「ゆうべ、電話をくれたじゃない」と尖った声を出した。「そうだったっけ?」と、母。「そうよ、蔵のことは聞いたわよ。今もう仕事に出掛けるから、いつかそっちに行くからね」と、母の声を待たずに受話器を置いた。
母は、ぼけてしまったのだろうか。車で一時間弱の距離に住んでいながら、母を訪ねるのは年に二、三回、そういえば去年のお盆から顔を出していない。時々かかってくる母からの電話と、野菜やこまごまとした物が詰まった母からの宅配便に甘えているだけだ。
父は十年近く前に亡くなり、以来、母は同じ敷地の中の別棟に住む弟の家族と行き来しながら、気ままな生活をしている。田舎の良さで、春・秋には山菜採りやキノコ採り、農繁期には近所にニンニクの皮むきなどの手伝いに行ったり、食べる分の野菜を栽培したりしている。街のお年寄りのように、何もやることがなくてぼーっとしているということはないはずだった。
弟の妻に電話で母の近況を尋ねると、「もうだいぶ前からよ」という。つまり、ぼけてきているということだ。姪も、「おばあちゃん、ぼけてるよ」と、いろいろと例を上げて説明してくれた。福祉の現場にいて、だれでもそうなる可能性があると分かっていたのに、母のことでは心の中にさざ波が立っていた。
この五月から、下田町(青森県)の大型ショッピングセンターの中にデイサービスセンターを開設する。私が携わっているNPOが運営主体となる。バリアフリーの大型SCが持っているさまざまな機能(買い物、飲食、遊び、文化、学習など)を、デイサービスの中に積極的に取り入れていこうという、国内では全く新しいタイプのデイサービスだ。ややもすると閉じこもりがちになるお年寄りが、SC内のデイサービスを利用することで、多くの人や物と接することができる。それが、心身のリハビリにもつながると確信するからである。
私の母にも利用してもらおうと、今、考えている。
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