|
|
|
|
|
環太平洋地域における地域づくり調査研究 エコツーリズムが地域を興し、文化を伝える オーストラリアのフレーザー島に学ぶ |
|
(財)地域活性化センターコンサルタント業務課副参事 |
|
|
菱川京子 |
|
|
|
|
過密や労働ストレスに悩む都市住民にオアシスを提供し、過疎や高齢化で活力を失った農村に明るい風を吹き込む。このような観点から、農村体験やグリーンツーリズムが日本でも各地で実施されているが、今、新しい視点を取り入れたエコツーリズムが注目され始めている。そこでエコツーリズムの先進地オーストラリアの実状を現地で探るため、昨年十一月上旬、五日間にわたってクイーンズランド州ブリスベーン市とフレーザー島を長友孝朗副参事らと共に訪問した。
オーストラリアでは現在、エコツーリズム業界が成長産業として脚光を浴びている。同国のエコツーリズムは、「自然環境の維持に寄与しながら観光を実施する」「自然体験を通じ、環境への理解や評価、楽しさを得ることができる」「地域コミュニティへの寄与」「地域文化への配慮」などの条件を満たすことが求められている。とくに、地域社会への貢献としては、地元雇用、地元商品購入、地元産業の紹介、が挙げられる。そのほかにも地元学校の卒業生に就職の場を提供したり、便宜供与することが求められている。
世界最大の島といわれるフレーザー島では、環境リゾートとして、さまざまな工夫をこらしたエコツーリズムが展開されていた。島で食材などを使用するときは、できるだけ地元のものを使い、島のリゾート施設のスタッフ約三百五十人の多くは地元から採用されている。この島が、地元にとって特別のすばらしい資源であることを一番よく理解しているのが地元住民である。だから、たとえウェーターとして働く場合でも、その理念を持って来島者と接することが重要であり、そういう認識の下で、施設の経営が行われている。
地域社会や地域文化の宣伝・促進に貢献しているのも地元の人びとである。たとえば、地元アボリジニ族のダンサーが伝統芸能を披露したり、来島の子供たちを対象にしたツアープログラムの中で、アボリジニの人びとと子供たちが一緒にブッシュの中に入り、その中で何を食べ、どのような生活をしていたかを見て回ったりするなど、子供たちと地元文化の接点となる役割を担っている。そのほかにも、スタッフがアボリジニ族の長老から、その文化を学ぶ機会が設けられている。
アボリジニは、筆記文化がなく、島の創造の伝説などもすべて口頭で伝えられている。その際、一言一句を決まった言葉で表現するため、ほんのわずかでも省略して話をすると、正式な伝説ではなくなる。そうしたことから省くときには事前に断りを入れるなど、非常に気を使っているとのことだった。
オーストラリアでは、エコツーリズムの理念を取り入れた観光業が、地域活性化のかなめになっているというケースは数多く存在する。また、エコツーリズムのマネージメントの主体は、ほとんど民間業者であるが、地元住民によるボランティアや、コミュニティグループがプロデュースした事例もある。最近では、過疎化の進む二、三の地方自治体がエコツーリズム関係の計画を策定し、地域振興の原動力にしようとする動きも出ている。
日本においては、エコツーリズムを普及していくうえで多くの課題があるが、地域住民の協力なしにこの事業は行えない。そのため地域への経済的波及効果の見込める仕組みづくりが不可欠であることを、この調査を通じて痛感した。
エコツーリズムとは、地域固有の自然・歴史・文化などの資源を生かし、それらの適切な管理に基づく保護・保全が図られ、かつ地域経済への波及効果が実現する観光である。