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自然と人との共生を議論
熱気溢れた小さな全国フォーラム

静岡県副知事

柴 順三郎

 昨秋、北海道羅臼町で開催された「全国原生自然環境保全フォーラムinらうす」に出席する機会を得た。
「原生自然環境保全地域」は、わが国に残された原生的自然を保全するため、自然環境保全法に基づき、全国で五地域、つまり遠音別岳(北海道)、十勝川源流部(同)、大井川源流部(静岡県)、屋久島(鹿児島県)および南硫黄島(東京都)が指定されている。
 このフォーラムは、これら保全地域を有する自治体関係者が一堂に集まって交流を深め、自然環境の保全や地域資源を生かした活性化策などを話し合う場として、一昨年秋、本州で唯一の指定地域を持つ静岡県本川根町の鈴木敏夫町長の呼び掛けで始められた。一回目は本川根町で開催され、今回が二回目である。
「全国」と名の付くフォーラムとしては、おそらく日本一小さな規模かもしれないが、その内容はどんなに大きな全国大会にも劣らない熱気に満ちあふれたものだった。
「原生自然環境とエコツーリズム」と題した北海道大学環境科学研究科の小野有五教授の基調講演に始まり、「自然と人との共生」をテーマとしたパネルディスカッションと続いたが、途中、国際環境ジャーナリストの今泉みね子さんが飛び入りで、ドイツのある村におけるコウノトリの営巣保護と地域活性化の取り組み状況を報告されるなど、型にはまらない手づくりのフォーラムであった。終始、白熱した議論が展開されたが、とくに、地元の辻中義一・羅臼町長、午来昌・斜里町長をはじめ、指定地域を持つ町村長の自然環境保全と地域活性化への近況報告は、ユニークでユーモアを交えたものであった。「この自然を守り抜こう」という共通した強い意気込みには参加者一同、胸をうたれた。
 現地視察を含めた二日間のフォーラムでは、自然環境を保全しつつ、自然と共により豊かに暮らすにはどうしたらいいか、すなわち「自然と人との共生」の問題が一貫して議論された。たとえば、自然環境の保全と観光客を中心とする交流の拡大は、裏腹でもあり、保全地域と利用地域間の緩衝地域の設置や、地元ガイドの同行などルールづくりの必要性なども指摘された。
 自然と人との共生は原生自然環境保全地域指定の有無とはかかわりなく、今後とも大きな課題となるであろうが、各地域の住民が、自然の重要性に気付き、それを誇りとして、今回のフォーラムのような取り組みを辛抱強く継続していけば、必ず解決の道は見いだされるであろう。
 現在では、バーチャルリアリティにより、過去にさかのぼって、原生の世界を擬似体験することは可能であるが、今後、IT革命がどんなに進もうとも、私たちは本物の自然に触れてこそ、その幾千万年余の歴史の重みと共に、その微妙な息づかいをも「実体感」できるのである。
 今回のフォーラムに参加し、知床半島の美しい自然と、そこに住む親切で心やさしい多くの人びとと出会うことができた。「美しい自然がやさしい人を育て、やさしい人びとが美しい自然を守り、育てている」ことを確認することができ、この限られた自然を後世に引き継ぐ必要性をより一層痛感した。
 次回のフォーラムは、世界自然遺産に登録されている鹿児島県屋久町での開催が決定し、その次は大雪山の麓、北海道新得町が名乗りを上げている。
 静岡県の小さな町の呼び掛けで芽生えた幼いつぼみが、小さな村や町の心やさしい人びとの熱意によって、大輪の花を咲かせようとしている。そんな期待を抱かせてくれるフォーラムであった。




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