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町村の役割果たせる権限と税財源の移譲を

全国町村会会長・福岡県添田町長

山本文男

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はじめに

 昨年七月、第百四十五国会において、地方分権一括法が成立し、地方公共団体関係者が長年要望してまいりました地方分権が、いよいよ実行の段階を迎えました。
 本稿では、町村長の立場から地方分権について、町村の実情に触れながら地域づくりに関し、思うところを少しく述べさせていただきます。

自然環境保全についての町村の役割


 近年、地球温暖化など環境保全に関する問題が世界的規模で取り上げられている中、わが国においても自然環境保全問題は、極めて重要な時期に至っていると思います。
 国土総面積の七割強を占める全国二千五百五十八町村は、人口では総人口の二割程度ですが、そこに住む人びとは、その生産活動を通じて、食糧の供給はもとより、水資源の涵養(かんよう)、自然環境の保全などに大きな役割を果たしてきております。
 しかしながら、人口の過疎化、高齢化の進行など経済社会情勢の変化により、人口自然減の町村が全町村の三分の二に及んでおり、これらの町村においては地域社会の崩壊が危惧されております。自然の中で、その恵みを受けながら生活してきた地域住民は、自然の大切さを身をもって知っており、自然と共生しながら自らの生命を維持するための生産活動を行いつつ、自然を守り育ててきたのです。もし、地域社会が崩壊するなら、自然を守る人びとが居住しなくなり、山や田畑は荒れ果て、都市に住む人たちにも大きな影響を与えることになります。
 地域社会を守り、再生するのは地域住民であり、「生まれ育った故郷に住み続けたい」という願いと声を反映させることができるのは地方公共団体であり、地域に根付いた行政こそ、地域社会を守り育て、農山漁村、ひいては、わが国の自然環境を守ることになるのではないでしょうか。

地域づくりの重要性


 社会情勢が激しく変化する中で最優先の課題は、自らの生活の場である地域社会をいかに維持し、発展させるかということです。地域に活力を持たせるための地域づくりは、その地域に生まれ育った住民の「ふるさと」を思う心から生じた英知と協力があってこそ可能であり、地域住民の手による、住民のための地域づくりこそが住民を幸せにするのです。地域づくりによって達成しようとするものは、ゆとりと生きがいに満ちた真の意味で豊かな住民生活でありますが、そのためには計画性を持って、地域の資源を最も適切に効果的に活用しなければなりません。このような意味で、地域づくりの基本には「土地利用をどのように行っていくか」ということがあります。それは地域に生き続けようとする住民の願い、住民の意思を反映した土地利用をどのように行っていくかということです。

土地利用に関する権限移譲

 全国町村会はかねてから、住民に身近な事務については基礎的な地方公共団体である市町村に移譲すべきであると主張してきておりますが、「農業振興地域の指定」や「農地の転用」など、地域における土地利用の具体的な在り方についても市町村の自治事務とすべきであると主張してきたところです。
 食糧を安定的に確保するために農地が必要なことは言うまでもないことでありますが、農地さえあればいいというものではありません。当然のことながら、そこに定住し、農地を耕し、作物を育てる人がいなければ、食糧の生産はできないのです。農業的土地利用を含め土地利用を地域に任せることによってこそ、地域の活力、生産力が最大限に引き出されるのです。そのことが、ひいては国民の食糧の安定的供給につながるものと確信しております。
 私の町におきましても地域活性化の施策を数多く実施してきましたが、その中で思うことは、土地利用をいかにうまくやるかが成否のポイントになるということです。
 その経験からしても、「農業振興地域の指定」に関する事務権限については市町村に移譲すべきです。また、「農用地の開発行為の許可」については、市町村が農業振興地域整備計画を策定し、農用地区域を指定するなど、地域の実情は市町村が精通しているのですから、市町村の事務権限とすべきなのです。さらに、「農地の転用」についてみると、現に知事許可事案である「二ヘクタール以下の農地転用」については、市町村農業委員会が十分に審議し、意見を付けて知事に進達していること、また、「市街化区域内の農地の転用の届け出」「農地の権利移動」の許可についても市町村農業委員会が処理しているのが実態であり、これらの権限は早く移譲すべきです。

税財源の移譲


 水と緑の供給源といった国家的な役割を果たしている町村は、今後におきましてもその役割を担っていかなければならない地域であり、人びとが定住し、地域社会が存続していくことが必要です。
 そのためには、経済効率のみにとらわれることなく、「国土を管理する」という大局的な立場からの施策が必要です。言うまでもなく、町村自身も華美や無駄を省くなど行政改革を推し進め、行財政の自主的、自立的な健全化を図る必要がありますが、自主的な行政執行などの機能を損なわず、地域社会の存続を図っていくためには、税源の偏在による財政格差を是正するとともに、一定の行政水準とその計画的運営を保障するうえで財政調整機能を持つ、将来的には税率アップも視野に入れた地方交付税の安定確保を図るなど、分権時代にふさわしい地方一般財源を確保することが重要です。

おわりに


 以上、土地利用に関した「地域づくり」に触れてみましたが、何より大切なことは、ソフト事業、ハード事業にかかわらず、「地域づくり」に取り組む住民の熱意でありましょう。そして、この熱意を次の世代につなげていくことによって人材が育まれ、真の地域の活性化が図られるのではないかと思います。

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