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文化財を利活用しながら保存する善通寺市の取組
1 旧善通寺偕行社の歴史的価値に着目
戦前は、大正天皇や皇太子(後の昭和天皇)が利用されるなど、旧陸軍第11師団の迎賓館的な機能を持っていた。戦後になると、進駐軍の社交場、善通寺区検察局、香川県食糧事務所仲多度支所、自衛隊クラブ、善通寺市役所、善通寺公民館、善通寺市立郷土館など、用途を変えながら継続して使用されてきた。 このように、四国に現存する軍事関連施設の代表例であり、地域における洋風建築物の具体相を知る上で重要な文化財であると同時に、善通寺市が近代化していく過程を示す貴重な文化遺産である。この旧善通寺偕行社は、平成13年6月15日に国の重要文化財に指定された。 善通寺市としては、旧善通寺偕行社を貴重な文化財として保護することは当然のこと、これまで約100年間様々な用途で使われてきた建物を保存整備することにより、今後の100年間快適に利活用できる施設として再生したいという思いがあった。
旧善通寺偕行社が国の重要文化財に指定されたのを契機に、その保存と利活用を目指し、旧善通寺偕行社調査整備委員会(後に「整備検討委員会」に改称)が設置された。この調査整備委員会は、3つの特別委員会と6つの専門分科会を擁する組織とされた。そこでは、旧善通寺偕行社の復元・改修、利用者の安全の確保、利活用を可能にする施設と周辺の整備等について検討が行われた。その結果、具体的な課題として、次のことなどがあげられた。 @ 伝統的木造構造の価値を損なわず、耐震性能を実現すること。 A 利活用の実験を実施し、必要な機能を精査すること。 B 附属棟も将来文化財となり得るよう100年使用できる施設にすること。 C 周辺施設や環境も整備し、全市の歴史的資産を活用すること。 善通寺市としては、旧善通寺偕行社の保存整備事業を実施するにあたっては、委員会・分科会などの活動・提言を大いに取り入れて進めていった。また、市民や地元関係者に対しても進捗状況を周知し、可能な限り協働の機会を設けることを重視した。 一般市民を集めての利活用実験としては、ジャズや雅楽の演奏会、講演会、写真展、ワークショップ、会議など、整備後具体的に想定されるイベントを計7回開催した。また、現地での検証やアンケート調査などを行い、利用者の立場に立った情報の収集を行った。さらに、各分野の専門家の立会を得て、照明や音響などの現状の把握・分析をし、保存計画にフィードバックするという、これまでの文化財保存修理事業ではあまりとられなかった手法を採用した。 耐震性能実験については、この事業では、実物大の構造体を現地に組み立てて実施した。市民や地元の小学生に公開して実施したこの試みは、旧善通寺偕行社に対する理解、親近感及び認識を深めてもらう絶好の機会になった。 こうした様々な実験・検討をもとに、保存整備事業が平成16年10月から4か年かけて行われ、平成20年3月に建物が竣工した。 3 事業の成果
現在は、法令に基づいて規制されていること以外については可能な限り対応することにより、利用者の利便性の向上が図られている。例えば、結婚式、同窓会、舞踊会、カラオケ大会、お見合いパーティーなど、従来の重要文化財の建造物では想定しにくかった利用方法にも対応できるようになっている。このことにより、利用者・見学者数ともに竣工以来順調な伸びを示している。 4 文化財の枠を超えた利活用を目指して 旧善通寺偕行社については、利用者・見学者数ともに伸びているが、まだまだ多くの市民に認知された施設にまでは至っていない。成熟した文化施設として飛躍するためには、周知・広報活動をさらに推進する必要がある。 また、新たなイベント・行事などの自主事業の創出はもとより、各種団体や民間事業者のニーズを的確に把握し、さらなる利用率の向上を目指す取組が必要である。 さらに、現在は善通寺市が直営で建物を管理・運営しているが、より柔軟な利活用を進めていくためには、新たな管理体制を検討する必要もある。 善通寺市としては、旧善通寺偕行社が誰もが気軽に利用できる現代の社交場になるよう、今後はソフト面を中心に充実させていきたいと考えている。
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