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天空回廊1000mの風にのって
1 荒廃した山を観光資源として活用
兵庫県宍粟市は、人口43,722人、面積658.60km2の市である(平成21年4月現在)。広大な面積を有する宍粟市は、その区域の90%が山地である。市の北部には1,000m級の山並みが東西に走っている。 この地域に住む人々は、林業を生業に生きてきた。しかし、国産木材の価格低下や「きつい」、「危険」など厳しい労働条件により、林業従事者の減少が進んできた。また、現在の林業従事者の高齢化も進んでいる。このため、昔から銘木「宍粟杉」の里として発展してきた宍粟の山々も、間伐、枝打ちなどの手入れができなくなった。こうしたことから、山は、風倒木が処理されないまま放置され、次第に荒廃し、目を覆いたくなるような状態になってしまった。 荒廃した山々は保水率が低下し、災害に弱くなる。平成21年8月の台風第9号災害の際には、普段はほとんど水の流れない谷川が氾濫し、民家に土砂が流入するなど甚大な被害がもたらされた。 また、鹿や猪などが植林した苗木を捕食するだけでなく、丹精込めて作った農作物を食い荒らすようになり、山林近くの農地は放置され、放棄田が年々増加していた。 このような現状を踏まえ、宍粟市では、荒廃した山にもう一度光を当て、市内外の多くの登山者が安心して登山ができる環境づくりや山を活かしたまちづくりを考えることが必要になった。そこで、一旦は見放され、放置された山を人が呼び込める貴重な観光資源として捉え、その再生を図る「宍粟50名山」策定委員会が発足した。 2 「宍粟50名山」登山道の整備の取組 「宍粟50名山」策定委員会は、古くから宍粟の山々を愛してくれた兵庫県下の登山愛好家を中心に、宍粟市内外から協力者を募り、約30名の委員で構成される組織である。 「宍粟50名山」策定委員会では、委員が中心になって、市内の山100座余を選び出し、高い山からランクを付け、低い山の場合は 地域性や「おらが山」といえるかどうかを考慮しながら、最終的に現在の50名山を決定した。 委員は、盛夏や厳冬のときも献身的に活動し、新しい登山ルートの開発、コースの整備、山頂標識・登山口標識の設置など、だれもが気軽に触れ合える環境づくりを行った。こうした「宍粟50名山」登山道の整備作業は、ルートの変更や雨による延期はあったが、予定よりも早く完了した。そして、「宍粟50名山」策定委員会は、宍粟市の高い山から身近な里山まで様々な山を紹介することができた。
事業の成果を見ると、近年の登山ブームもあり、多くの登山者が「宍粟50名山」を目指し、宍粟市を訪れるようになった。登山者は、四季折々の草花を目にしたり、鹿を発見したりすることによって自然を感じ、鳥のさえずりに心を和らげることができている。 また、近年では、山林には、森林浴を通じて精神的ストレスを緩和する「森林セラピー」の効果があることも実証されてきている。さらに、適正に管理された山林は、二酸化炭素の吸収源となり、地球温暖化の防止にも役立っている。
今回「宍粟50名山」が策定され、市外から多くの登山者が訪れるようになったことで、普段何気なく眺めている山が林業資源としてだけではなく、観光資源として活用できることに気づかされた。今後の課題としては、林業従事者の確保、登山者の安全の確保、登山ルートにある資源の整備、地元住民と登山者の交流、観光効果の地域への還元があげられる。 まず適正に管理されない森林は、環境悪化・土砂災害を招く恐れがある。山を守るためには、今後とも林業従事者の確保を図ること、特に若者が林業関係の仕事に就労するようにすることが重要である。 また、近年の登山ブームの中で、1,000m程度の山であるとの認識から、比較的軽装備で「宍粟50名山」の登山をし、遭難する登山客が年に数人はいる。駐車場が整備されていない登山ルートも多く、地元住民の車両通行にも支障をきたしている。今後登山の安全の確保の取組が求められる。
加えて、「宍粟50名山」のふもとの集落には、集落そのものの維持が困難な地域が点在している。こうした集落の活性化を図るためには、地元住民と登山者との交流の促進が求められる。そこで、今後地域資源を活用したまちづくり活動や、ボランティア等の外部からの協力による森林整備事業を展開していく必要がある。 このほか、「宍粟50名山」の周辺一体を観光資源として開発し、観光効果の地域への還元や地域が元気になるまちづくりを展開するため、宿泊施設、休憩所、地元物産販売所の整備等をしていく必要がある。
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