事例4)
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特産品野菜の復活及びブランド化戦略
〜産学官連携による特産品野菜の復活、ブランド化〜

■事業実施の背景として
 かつては農業がさかんな地域であった県内の過疎の進む小さな集落において、高齢者による農作業の負担、離農者の増加によって、地域の特産野菜の栽培が途絶えていた。しかし、地域住民の間で地域おこしの起爆剤として、地域特産野菜の復活を望む声があり、その活動を開始した。
 この活動の手助けとして、地元の自治体及び地域住民から大学の知恵を借りたいとの声があがり、県と「大学コンソーシアム石川」が連携して行っている「地域課題研究ゼミナール支援事業」に提案があった。
 この提案を、金沢大学法学部知的財産法ゼミナール(大友ゼミ)が引き受け、連携して取り組むこととなった。
 「大学コンソーシアム石川」とは石川県内の全ての高等教育機関〈大学、短期大学、高等専門学校〉に、県内全ての自治体、経済団体が加わり、連携して教育交流・情報発信・調査研究等を行い、高等教育の充実・発展・及び地域社会の学術・文化・産業の発展に寄与することを目的として、平成18年4月1日に設立された。
 「地域課題研究ゼミナール支援事業」とは県が支援する「大学コンソーシアム石川」の事業の一つであり、県内高等教育機関の学生がゼミナールの活動として、地域の課題解決を目指して、地域と一体となって取り組み、地域の活性化の促進を図ろうとするものであり、その活動費を助成する事業である。
 平成19年度は県内ゼミナールから36件の応募があり、22件採択された。(支援規模:1課題 20万円)  平成20年度は26件の応募があり、19件が採択された。(支援規模:1課題 28万円)

■大学の地域貢献と実践的な取組み

 金沢大学法学部知的財産法ゼミナール(大友ゼミ)では平成18年に能登半島の中程に位置する七尾市沢野町において、地域の特産品である沢野ごぼうの収穫の手伝いをきっかけとして、沢野ごぼうのブランド確立に向けた取り組みを開始した。
 大友ゼミは知的財産法を専門とするゼミナールで、ブランディングの研究を行っている。机上だけではなく、ブランディングの実践的な取組みとして、地域の特産品ブランド化を支援するため、活動に積極的に参加し、地域社会でゼミの実践を行っている。翌年の平成19年度には白山市河内町奥池地区に伝わるヘイケカブラと輪島市三井町細屋地区に伝わる細屋ごぼうの生産復活とブランド確立に向けた調査研究事業に取り組んだ。

■連携により活力が生まれた

生産者と学生の意見交換会(沢野ごぼう)

収穫したごぼうを販売する学生(沢野ごぼう)

イベントで販売を手伝う学生(沢野ごぼう)

ショベルカーで畑をつくる上野組(細屋ごぼう)

生産者から種まきの方法を教わる学生(ヘイケカブラ)

ヘイケカブラ種まき
 七尾市沢野町においては、ゼミの学生らは沢野ごぼうの種まき、収穫作業の手伝いに参加し、実際に農業体験をしながら、沢野ごぼう祭りなどのイベントへ参加し、販売の手伝いを行った。また、ごぼうの新しい加工を研究するため、農家レストランを訪れ、ごぼうのスイーツ作りや料理方法の研究を行う等、地元住民と意見交換を重ねた。そして、ストーリー性のある沢野ごぼうブランドを発信するための情報発信源として、沢野ごぼうについて分かりやすく解説した沢野ごぼう事業協同組合のホームページを立ち上げた。このホームページの中で、沢野ごぼうの特性、調理方法だけでなく、歴史的経緯などを紹介することで、ブランドアイデンティティーの確立に一役買っている。学生もこのホームページの運用を通じて、ブランド戦略を学ぶことが多かったとのことである。
 この経験を生かして、平成19年度は白山市河内町奥池地区で、ヘイケカブラの復興活動に取り組んだ。この地区は日本の三名山のひとつである白山にほど近い山間の小さな集落で、昭和38年ごろまで焼畑カブとして栽培されていたヘイケカブラを地域活性化の起爆剤にすることは出来ないかという地元住民のアイデアから、ヘイケカブラの復興に取り組もうとする地域である。ゼミでは里山と奥山でヘイケカブラの種まき、収穫作業の手伝い、多量生産方法、ヘイケカブラの特性及びヘイケカブラの苦味を活かす料理方法の研究などを行った。活動を通じて地元住民と学生の交流も盛んになり、過疎化の進む集落に賑わいと活気をもたらしていった。このゼミの取組みが刺激となり、河内町周辺地域において、これまでヘイケカブラを生産していなかった農家も新たにヘイケカブラの生産に前向きな姿勢を示している。
 又、同時期に、ゼミでは別の班を編成し、能登半島中央部の山村地域・輪島市三井町細屋地区においても活動を行った。この地区は、かつては農業の盛んな地域で、そのなかでも細屋ごぼうの生産はこの地区の農業の中核となっており、味、香りともに良いと評判であったが、ごぼうの収穫には大変な労力を費やすこと、また離農者が増加したこともあいまって一時途絶えてしまっていた。
 しかし、そのような状況の中で、細屋の農業を憂慮した地元の建設業者「上野組」が、地元に活力を取り戻したいと、ほとんど栽培されなくなっていた細屋ごぼうの復活をしようと計画し、ゼミと連携して地域起こしを開始した。
 ゼミは収穫の手伝いをはじめ、細屋ごぼうを使ったお茶やタルトの企画、制作を行い、収穫祭などのイベント企画や、ブランド戦略を担当し、活動を盛り上げている。
 そして、平成20年4月には、上野組は県内の建設業者として始めて本格的に農業に参入した。「上野組」が農業に参入したきっかけは、建設業界の冷え込みと、農地法の改正により農地の借り入れが出来るようになったことによる。また栽培方法において、建設業者ならではのユニークなアイデアを駆使し、特に労力がかかる収穫作業において、建設資材の型枠を利用して、高齢者でも簡単に収穫出来るよう工夫し効率化を図った。初年度の今年は300キロの収穫であったが、来年は県内の食品加工業者等から3トンの引き合いがあり、増産のための栽培計画を進めている。

種まきをする学生と生産者(細屋ごぼう)

建設資材を利用したゴボウ畑(細屋ごぼう)

■さらなる地域貢献と活性化を目指して
 ゼミでは、これまで携わってきた特産野菜を使用した商品の製造販売を手がける大学発ベンチャー企業、株式会社「きんぷる」を平成20年11月に起業した。

(株)きんぷる
山本社長
(大友ゼミ3年生)
この会社ではこれまでの活動で培ってきた人脈、経験を生かしながら、規格外のため商品にならず廃棄してしまう特産野菜を使ってスイーツを考案し、加工から販売までを行う。七尾市の「沢野ごぼう」や輪島 市の「細屋ごぼう」でタルトを考案し、好評を得 たという。しかし、利益を出して、いかに売れる商品にするか、これからが正念場となる。
 また、学業と

沢野ごぼうで作ったタルトを販売する学生
の両 立もある。同時にそれぞ れの野菜 について地域団体商標の取得を目指し、その支援をゼミが行うことになっている。この取 得後、いかに地域のために活かしていくかが課題になると思われる。
  今後も、自治体は、地域住民と大学との間をコーディネートする役目を担い、マッチングを行い、大学は、知的財産を保護、発展させるための法律の研究を活かし、実践的な特産品野菜のブランディング戦略をたてるとともに、地元住民との交流を行い、地域活性化を図っていくことにしている。

■自治体名:石川県
■人  口:1,172千人
■面  積:4,185.48km2
■事 業 名:特産品野菜の復活及びブランド化戦略
■事業主体:(ヘイケカブラ)白山市、奥池地区住民(沢野ごぼう)沢野ごぼう事業協同組合(細屋ごぼう)株式会社上野組
■連携大学等:国立大学法人金沢大学法学部知的財産法ゼミナール、       大友信秀研究室
■事業年度:平成18〜20年度
●連絡先
石川県企画振興部地域振興課
TEL(076)225−1327 FAX(076)225−1328

■石川県企画振興部 俵次長のお話

川畑主任企画員(左)、俵次長
*事業の効果と課題は?
 石川県は地方としては高等教育機関が多く、33,000人の学生と教員が在籍し、そのことは財産であり、その活力を地域に活用してもらうことが一番の目的でした。高等教育機関は教育、研究が中心で社会貢献はまだまだ弱いですが、この「地域課題研究ゼミナール支援事業」をきっかけとして、地域と一緒に取り組む体制づくりが出来ました。地域側の高等教育機関への期待は大きく、本事業が終了しても、継続的に活動を行ってもらいたいとの希望がありますが、高等教育機関としては学生の本分である教育と地域の活性化事業との間にギャップがあり、それをいかに埋めるか、埋められないと続かないという状況があります。とはいえ、学生が地域に入るだけでも、人と人のつながりができ、活性化につながるため、今後は大学が組織として、継続的に事業を行っていってもらうことを期待しています。

■金沢大学法学部 大友教授のお話

大友教授
*大学の関わりと役割は?
 地域団体商標の関係で地域と関わって来ましたが、地域のブランドはどういうものか見抜く力、市場性を知ることが大切です。地域へは、ブランディングやマーケティングを通じて、協力してきましたが、沢野ごぼう、細屋ごぼうも広く認知されてきて、地域の人のプライドにもつながってきました。地域の期待にどう応えるか、ゼミがボランティアとして行っていくには継続性に限界があり、本気で事業化まで関わる決意で、地域ブランディングを行う大学発のベンチャー企業を作りました。地域をフィールドに大学の知を実践する人材育成を進め、社会に貢献したいと考えています。

■白山市白山ろく整備推進室 山下主幹のお話

山下主幹
*事業の効果は?
 白山麓地域の振興策として、白山市がコーディネーターとなり、石川県石川農林総合事務所の支援のもと、生産者の熱意と大学〈大友ゼミ〉の地域貢献への取組みにより、協働して地域に埋もれた特産農産物の復活による地域の活性化を図ってきました。まだ生産の拡大には至っていませんが、学生、生産者、自治体の3者が頻繁に行う作業や会合により、緊張感が生まれ、さらに、学生が地域に入ることにより、地域にやる気が出てきました。
 多くのマスコミにも取り上げられましたので、今後はヘイケカブラを貴重な地域資源としてとらえ、田舎暮らし体験や、二地域居住なども取り入れ、地域の活性化に努めていきたいと思っています。

■株式会社上野組 上野社長のお話

上野社長
*取組みのきっかけと今後の展望は?
 農業への参入を決めた理由の一つは建設業界の冷え込みがあり、数年前からキャンプ場の管理・運営に当たるなど新たな事業にも進出していました。たまたま幻の「細屋ごぼう」のことを知り、会社には農家出身者も多く取組みが出来ると考えました。また、農地法の改正により、一般企業が農業に参入できるようになりました。後継者不足により、ふるさとの農地が荒れて行く状況は大変気になっており、農業に参入することにより、農地の有効利用、農家の意欲の増進、輪島市の農産物の知名度アップ等により、地域の活性化につながればいいと思っています。

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