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事例3 長野県飯田市

飯田市橋南第一地区第一種市街地再開発事業
(トップヒルズほんまち)
〜市民と行政が連携した街なか居住の促進〜

●自治体Data  ●関係団体担当者の声


●魅力ある街なか居住施設「トップヒルズほんまち」

はじまりは大火からの復興

 長野県の南端、伊那谷のほぼ中心に位置する飯田市。古くから交通の要衝であり、城下町として発展。文化・産業の中心地として栄えてきた。市の人口は約10万8千人。市域面積は約658.76km、天竜川がおりなす河岸段丘を中心に市域が広がる。市の中心市街地は、段丘崖に囲まれた台地の上で、「丘の上」地区と呼ばれており、地形的にも郊外と区分されている。

●トップヒルズほんまちの横をはしる裏界線
 飯田市の中心市街地に対する取り組みは、昭和22年の大火からの復興に遡る。古来より「信州の小京都」といわれた市街地であったが、その大半がこの大火によって消失。現在の整然とした街路は、この復興によるものである。復興の象徴となっているのが「りんご並木」と「裏界線(りかいせん)」。「りんご並木」は、復興時に新たに設けられた25m幅の防災道路に、昭和28年、街の復興を願う飯田東中学校の生徒たちが、りんごの植樹をしたことで誕生。その後「飯田のりんご並木」として全国に知られるようになり、街のシンボルとなっている。「裏界線」は、避難路や防火活動がしやすいよう、市民の理解と協力により境界を2m広げることで生まれた防災用通路。現在も防災用としてはもちろん、生活用道路としても街とともに生きている。
 その後、昭和40年代までは、総人口約19万人の広域商圏の中心として発展してきた飯田市であったが、車社会の影響は例外ではなかった。昭和49年の中央自動車道飯田インターチェンジの開通や国道153号バイパスが完成すると、それに伴い郊外への都市機能の移転、大型店や事務所の出店等も始まった。また、面積が狭く地価の高い市街地から郊外への人口流出が進み、平成3年に12,755人であった中心市街地人口は、平成8年には11,731人、平成17年には10,270人と、約20%減少し、高齢化率も34.2%となった。

市民による市街地再生

●トップヒルズほんまち
 このような衰退に対し、中心市街地においては商店主や市民による「まちづくり協議会」など勉強会や研究会がもたれるようになった。平成2年には中心市街地活性化委員会発足、市民よる「中心市街地活性化基本構想」が市に提出された。また、平成3年には、中学生や市民のワークショップによる「新しいりんご並木改修案」も策定。人の通行を重視した、歩行者と車の共存する公園型道路として平成11年に同並木が改修された。市民の意識が高まる中、飯田市でも、「特色あるまちづくりを市民の手で」という意識で、市街地再生に向けて取り組んできている。
 商店主や市民による勉強会が行われる中、中心地の再開発事業計画についても検討がなされ、平成6年6月に橋南地区再開発準備組合が設立。翌年3月、市街地総合再生基本計画等が作成されると、平成9年6月には、商店街とりんご並木に囲まれた区域に複合ビルを建てようと、橋南第一地区市街地再開発準備組合が設立、翌年、街区をいくつかのブロックに分けて事業化、商業機能、交流・文化機能、住宅機能からなる複合型施設建設の再開発基本計画が策定された。
 再開発には商業の再生ももちろんだが、定住人口の増加、つまり「街に住む」ことをまずは重要としていた。そして平成13年7月、魅力ある街なか居住施設を目指した再開発ビル「トップヒルズほんまち」が、街のシンボルであるりんご並木の沿道に完成した。

即日完売、「トップヒルズほんまち」の分譲マンション“ヴィスタパレス2001”
●トップヒルズほんまち断面構成図
●橋南第一地区市街地再開発事業 周辺図
 飯田市の中心市街地再開発第1号として第一種組合施行で建設された「トップヒルズほんまち」。地上10階・地下1階建、駐車場121台を隣接。4階〜10階が、42戸の分譲住宅となっている。住宅は多様なライフスタイルに応じて14種類。飯田地方初めての中間免震構造で、バリアフリー設計である。住宅機能以外にも、1階にはスーパーマーケットを中心に、花屋・雑貨店、イタリアンレストランが、2〜3階には歯科医院が入っている。さらに、2〜3階には市役所機能の一部を移転した「飯田市りんご庁舎」を設置、住民票や諸証明等の交付手続きが行える。他にも、市民サロン・子どもサロンや会議室、ハローワークプラザなども入っている。
 飯田市では初めての分譲住宅の販売となったが、販売と同時に即日完売し、大きな反響を呼んだ。これは、中心市街地に住む65歳以上の方々(150人)を中心とした聞き取り調査(「いきいきライフ調査」)や、都市圏在住の飯田市出身者(約1,600人)に対する住宅アンケート(「住宅販売リサーチ」)の実施、さらには「住まいと暮らし方講座」の開催など、販売前に行ってきた取り組みに対する成果ともいえる。なお、販売価格は約2,800万円、購入者の年齢層は50歳代が32%、60歳代で31%、40歳代が25%と続いている。
 市街地の商業機能、交流・文化機能、住宅機能の再生の核となる再開発ビルの管理は、まちづくりの担い手として活動する「株式会社 飯田まちづくりカンパニー」(通称「まちカン」)が受託。まちカンは、再開発事業のため、まちづくり会社設立の構想が生まれ、市民有志らにより平成10年8月に市街地再生を目的として設立。まちづくりに対する市民の意欲が会社設立という「かたち」になったことで、市も、市民、企業等とのパートナーシップに基づいた新しいまちづくりの仕組みとして出資を行い、翌年8月には、TMOにも認定されている。
 まちカンでは、同施設の管理運営の他、隣接する空き店舗を活用し、テナント誘致を行い、商業施設として賃貸も行っている(「MACHIKAN2002」)。このことは、空き店舗の活性化と同時に、「トップヒルズほんまち」と「りんご並木」、近隣商店街、裏界線に回遊性を持たせ、周辺の賑わいづくりにも役立っている。

継続する再開発と魅力ある街なか居住に向けて
 「トップヒルズほんまち」への入居者は、市外や県外からの帰郷者などもおり、定住人口は約100人増加。また、同施設での交流人口は、駐車場設置により年間約5万人がりんご庁舎を訪れており(市営駐車場の利用状況:144,163台(H14)→171,269台(H17))、市民サロンでは、夕方から高校生で賑わいも見せている。市民証明コーナー(総合窓口)も、平日は午後7時まで、更に土曜日も開設しておりサービス向上を図っている。
 平成18年10月には、「トップヒルズほんまち」の向かいに、橋南第二地区市街地再開発事業として複合型施設「トップヒルズ第二」が完成。この施設の分譲住宅も既に完売。購入者の年齢層は、50歳代が31%、30歳代で27%、40歳代が23%と続き、「トップヒルズほんまち」よりは若い年齢層が購入しているといえる。隣接する堀端地区においても堀端地区優良建築物等整備事業が現在着工中(平成19年竣工予定)。
 いずれも先行事業の実態を見極めながら段階的に実施し、街なか居住・商業・福祉・健康・コミュニティなど、多様な機能を持った開発を図っている。また一方で、市内では民間による分譲マンションが建設されており、同施設の評判が呼び水になったともいえる。
 ただし、ハード事業だけが全てを解決しているわけではない。市民の勉強会や検討会もそうだが、例えばまちカンでは、りんご並木沿いにある交流拠点「三連蔵」を運営し、コミュニティの場づくりをすすめている。また、音楽と映画を主な活動としている市民グループ「IIDAWAVE」(事務局:まちカン)では、飯田の街をもっと楽しめるよう無料ライブやコンテストなど各種文化活動を開催している。このような市民による活動により、ハードとソフトの両面から住みたくなる街なかの魅力づくりがなされているのである。
 飯田市における取り組みは、行政だけでなく、市民による主体的・積極的な取り組みが原動力になっていると思われる。快適な居住の場づくりと、賑わいやコミュニティ形成の促進が今後も期待されるとともに、市民の意見を聞き、市民と連携する街づくりの重要さに改めて気付かされた。
生まれ変わる飯田の街
〜橋南第一地区市街地再開発事業〜
 橋南第一地区市街地再開発ビルが記念すべき2001年という新しい世紀の幕開けとともに無事竣工を迎えることができました。これもひとえに、近隣の皆様を始め、関係いただきました全ての方々のお陰と、厚く感謝申し上げます。
 戦後の荒廃と、街の大半を焼き尽くした大火からの復興をとげて50年、飯田の市街地はかつての賑わいを徐々に失ってまいりました。そうした時代の流れの中で私たちは、かつての華やかだった頃の飯田の街に思いを馳せながら、伊那谷の中心、地域の顔である飯田の街に賑わいを復活したい、子供たちに歴史と文化のある街を残したいとの熱い想いからこの市街地開発事業を開発いたしました。「すばらしい街を創るため、道にりんごを植えたい」という中学生の想いが50年後の今、飯田市の代名詞ともいうべきりんご並木になったように、この再開発事業を進めるにあたっても、「あの時の苦労が、今日の飯田の街の基礎になっている」と50年後の飯田市民に、そう言ってもらえるような事業でなければならないと肝に銘じてまいりました。
 まちづくりは息の長い事業です。今後この再開発事業の完成が、第二地区へのよいステップとなりますよう期待いたすものであります。私たちは飯田の街が好きだ、街を良くしたい、だからこそ心を一つにしてこの熱意と取組みを、次の世代につなげていきたいと心から願って止みません。

橋南第一地区市街地再開発組合 理事長 赤羽栄一(故人)
〜橋南第一地区市街地再開発事業パンフレットより〜

自治体DATA

●現在着工中の堀端地区優良建築物等整備事業
● 地方公共団体名:飯田市
● 人口/面積:107,593人/658.76km2
● 事業名:飯田市橋南第一地区第一種市街地再開発事業
● 事業主体名:飯田市橋南第一地区市街地再開発組合
● 関係団体名:(株)飯田まちづくりカンパニー
● 事業年度:H9年度〜H13年度
● 事業総予算:約3,300,000千円
● 参考URL:
http://www.city.iida.nagano.jp/shigaichi/dai1/index.htm
http://www.machikan.jp/
お問い合せ 飯田市産業経済部市街地整備推進室
        TEL.0265-52-1715


関係団体担当者の声
(株)飯田まちづくりカンパニー常務取締役の松村さんにお話を伺いました。

事業実施で苦労した点

●株ム田まちづくりカンパニー常務取締役松村茂利さん

●ビルの近くには野外ライブも行われる三連蔵がある
 準備段階ではいろいろ心配がありましたが、やはり実際に入居希望があるかどうか一番不安でした。事前のアンケート調査の実施には特に力を入れ、関東など都市圏の飯田出身者にも積極的に出向いていきました。
 直接、訪問してお話を伺ったりして、結果入居された方もいらっしゃいます。こういった地道な取り組みが実を結んでいると考えます。

事業に対する考え
 分譲住宅も即日完売だったのはうれしい限りです。今回のような再開発事業は、継続していかないと意味をなさないと思います。実際に街の中に分譲マンションが建設されるなどの波及効果の芽も生まれてきています。継続的な街なかへの投資により、周辺への波及効果が生まれ、街なか再生の流れになって欲しいと思います。
 私たちも併せて三連蔵の運営やIIDAWAVEなど市民文化活動の支援を行いながら、まちの魅力づくりを進め相乗効果を創出したいと思います。

まちづくりカンパニーとしての活動
 まちづくりへの取組みをしていく中で、まちカンの名前も浸透してきました。
 ただ実際は6人の職員で活動しており、1人が何役もこなしているのが現状です。そのかわり、会員やボランティアなど多くの方々のご協力を頂いており、様々な事業が実施できていると思います。
 会社である以上、経営状況には留意しているところですが、例えば「MACHIKANビル2002」でのテナント料などはギリギリのところで設定しています。これは、物販が厳しい中、良い店舗に集まっていただき、街なかの賑わい創出につなげていきたいからです。今後も、補助金に頼らなくても運営していけるよう、このような賃貸等の採算事業だけでなく、未開拓の分野への進出も検討していかなくてはならないでしょう。

行政に対して
 現在も行政の皆さんには表裏一体のようなご協力をいただいており、運営面で助けられております。今後も連携してまちづくりに取り組みたいと考えています。また、まちづくりの大きなプロジェクトにも関わりながら、役割を持たせてもらい、我々の存在をアピールするとともに、まちづくりのコントロールタワーのような存在になっていきたいと思います。

今後の課題や取り組みなど

●橋南第一地区再開発ビル沿いのりんご並木
 今後は公共交通機関の充実にも期待したいところですが、これは実際にはなかなか厳しいであろうと思います。現実が車社会である以上、駐車場の存在も欠かすことはできませんが、それだけでもまちの魅力は生まれないので、バランスが大事ではないかと思います。いずれにしても、人が集まらなければまちは形成されません。今後もまちに人が集う仕組みづくりを検討していきたいです。

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