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事例8 福岡県 北九州市

北九州市旧古河鉱業若松ビル
石炭で賑わった若松のシンボル的な建築物を交流・文化・観光の拠点として活用

●自治体Data ●行政側の声 ●指定管理者(実際に管理運営する方々)の声


●北九州市旧古河鉱業若松ビルの夜景
指定管理者制度導入の背景
 九州の玄関口に位置する北九州市。若松区と戸畑区をへだてる洞海湾に、日本独自の技術で昭和37年に完成した、当時は東洋一の吊橋として名を馳せた若戸大橋がかかっている。その若戸大橋のたもとに、北九州市旧古河鉱業若松ビル(以下、古河鉱業ビルという。)が建っている。この建物は、筑豊地方における石炭事業の展開のため、古河鉱業株式会社が若松支店のオフィスビルとして大正8年に建設したものであり、石炭で賑わった若松の歴史を物語るシンボル的な建物として、地元住民に親しまれてきた。 
 また、古河鉱業ビルのある若松南海岸通り一体は、海岸沿いに遊歩道を整備するなど都市景観整備地区の指定を受けており、古河鉱業ビルとともに、若松バンド(近代港湾都市固有の帯状の都市空間)の景観を形作ってきた。
 しかし、古河鉱業ビルは、平成8年以降は入居者も無く、施設の老朽化が激しくなったため、所有者において取り壊しが検討されていたところ、保存・活用を求める、地域住民による署名、寄付承諾書などが市に提出され、市において保存活用に向けた検討が進められた。市は、このような地元の熱意を踏まえ、建物を取得して保存改修工事を行い、平成16年9月18日、若松区の交流・文化・観光拠点として開館した。
 開館後の管理運営に当たっては、民間の活力、創意工夫を活かして、市民サービスの向上、施設の利用促進を図るため、公募による、指定管理者制度を導入することとした。

選定までの取り組み
 新設の施設であり、また、当時は市において指定管理者制度を導入した事例がほとんどなかったため、管理運営の方針決定や公募の準備に時間を要した。平成16年4月に市政だよりにて公募を行い、申請のあった団体に対しての事前説明会や現地説明会を開催した。その後、5月に選考委員会を開催した。
 選定のポイントとしては、[1]交流・文化・観光拠点施設としての活用方策が提案されていること[2]イベント誘致や自主事業などによる具体的な提案がされ、施設の利用促進が図られていること[3]地域の住民や団体、地域の行事などとの交流、連携が図られていることなどが重要視され、その結果、「旧古河鉱業若松ビル管理運営委員会」が選定された。
 指定期間については、新設の施設であることや、他施設などにおける指定管理者制度導入の動向を見る必要があることなどから、平成17年度までの約1年半と短めの設定となっている。(次回の公募では指定期間を3年間としている)
 その後、平成16年6月の市議会において、市の産業観光施設の設置及び管理に関する条例に、古河鉱業ビルを加えるという改正議案と、指定管理者の指定議案を同時に上程し、可決された。

指定管理者による施設の管理運営状況
 「旧古河鉱業若松ビル管理運営委員会」(以下、委員会という。)は、地元の自治会、婦人会、商店街連合会、NPOなど、若松区のまちづくりに関わりの深い団体などで組織した任意団体で、古河鉱業ビルの保存活動を行っていた「若松南海岸通りの歴史と景観を考える会」のメンバーが中心になっている。
 古河鉱業ビルは、交流・文化・観光拠点として、大きく2つの側面を持っている。一つは施設の多くの部分を、多目的ホールや会議室として一般に貸し出していることから、会議やクラブ活動など、コミュニティセンターのように使用することができる、地域の交流拠点としての側面。もう一つは、施設自体が、大正期の建築様式を色濃く残し一見の価値があることや、石炭の積み出し港として栄えた歴史を紹介するパネルなどを展示するなど、文化・観光施設としての側面がある。
この運営を、委員会は[1]管理運営の事務局[2]地元住民との連携、利用促進、イベント誘致など人脈に関する部分を担う地域調整部[3]自主事業の実施、イベントのタイアップを行う行事企画運営部の3つの組織に分けて運営している。
 古河鉱業ビルには、地元から雇用されたスタッフが常時2名を基本に配置され、利用の受付や、施設の案内・説明などの事務を行っている。イベント時には、スタッフだけでは人数が足りないため、地元を中心とした関係団体などからボランティアが参加し、運営に協力している。

導入後の効果や今後の課題
 指定管理者制度を導入した効果としては、指定管理者の委員会自体が地域住民を中心としていることから、地元団体や地域のイベントなどとの連携が図りやすく、施設の設置目的にかなった、地元に愛される施設として積極的に活用されていることである。委員会は、軽快なフットワークで、近隣のイベントだけでなく、若松区内の様々なイベントを誘致し、古河鉱業ビルとタイアップを実現させ、利用促進を図っている。
 また、自主事業として、古河鉱業ビル内においてクラシックコンサートを開催、なかにはワインを飲みながら、ゆっくりコンサートが聴ける企画などもあり、指定管理者のアイデアが活かされている。
 貸館業としての利用状況は、一ヶ月あたり約1,200人である。
 一方、観光施設としての見学者の利用は、一ヶ月あたり約1,300人であり、いずれも好評である。また、利用者からの要望を受けて、一杯150円でコーヒーサービスも始めたが、こちらも好評である。
 市の試算によると、直営の場合に比べ経費の節減が図られ、財政面でも指定管理者制度導入の効果がでているとのことである。
 しかし、市の財政状況が厳しいなかで、指定管理者への委託料はかなり抑えて設定されている。その多くが人件費にあてられているなか、施設の広告費や自主事業などにあてられる費用は十分ではないため、口コミによる利用者の拡大に期待する面も大きい。
 これらの点を改善するためにも、平成18年度からは利用料金制度を導入することとしており、それまで市の収入となっていた多目的ホールなどの使用料を指定管理者の収入とすることで、指定管理者の経営努力がさらに発揮しやすくなり、より一層の利用促進を図ることができる環境を整備することとしている。


●建設当時そのままに保存された階段

●多目的ホールB
自治体Data
●自治体名:北九州市
●人口/面積:1,002,024人/485.55km2
●施設名:北九州市旧古河鉱業若松ビル
●施設所在地:福岡県北九州市若松区本町一丁目11番18号
●指定管理者名:旧古河鉱業若松ビル管理運営委員会
●指定期間:平成16年9月18日〜平成18年3月31日
●募集方法:公募
●利用料金制:導入してない(平成18年度から導入)
●自治体から指定管理者への支出:有
●参考URL:http://www.city.kitakyushu.jp/~wakamatu/sintyaku/hurukawa.html
お問い合せ 北九州市総務市民局市民部地域振興課
TEL 093-582-2111


行政側の声 北九州市地域振興課の柴田係長と村田さんにお話を伺いました。


●お話を伺ったお二人
○制度導入や、募集から指定までに苦労した点は
 地方自治法が改正され、それに伴って指定管理者制度を導入することになりましたが、開館前の時点では北九州市において指定管理者制度を導入した事例がほとんどなく、また新設の施設であるとともに、施設の性格も、市の施設では例のない交流・文化・観光拠点という多目的な施設であることから、まさに手探りで、管理運営の方針決定や公募の実施、条例の改正を行わなければならなかったことが苦労した点です。
 また、古河鉱業ビルの使用料の設定にあたっては、小学校区単位のコミュニティ施設である市民センターと同等規模であり、また、同様の利用形態が予想されたため、市民センターと同額にしました。

○指定管理者の運営に対する考え(期待や要望など)
 委員会は、事業を実施するうえで、地元住民との連携体制、協力体制をとりやすいというところが、指定管理者に選定された最大のポイントであり、今後もその点について能力を発揮してもらい、地元とタイアップした事業展開を図ってもらいたいと考えています。
 一方で、公の施設として公平・公正な運営に留意するとともに、経費の節減を図りつつ収益を上げるというように、効率的かつ効果的な運営を図ってもらいたいと思っています。

○指定管理者に対する行政側の支援・指導・関わり方などはどのように考えていますか
 委員会、行政ともに、指定管理者制度は初めてであるため、管理運営上の様々な意見を交換し、より良い事業展開を図ることを目的に、協定書の中で、市と指定管理者との「運営協議会」の設置を定め、施設の運営状況や利用状況について、定期的に協議しています。また、半年ごとに業務の執行状況について、市が定期監査を実施し、チェックもしています。
 一方で、指定管理者に、創意工夫を活かした事業を実施していってほしいと考えていますので、指定管理者からの様々な提案については、四角四面にとらえるのではなく、前向きに検討しながら支援していきたいと考えています。

○今後の課題や取り組みなど
 平成18年度からは利用料金制度を導入することとしており、指定管理者が頑張れば、その分だけ収入が増えていくことから、創意工夫を活かして、さらに頑張っていただけると期待しています。
 また、利用料金制度の導入によって、委託料からその分に関する部分は差し引くことにはなりますが、指定管理者の意欲をそぐような金額にならないように、一方で甘い査定にならず公平な運営が妨げられないように、見定めていかなければならないと考えています。
 今後とも、指定管理者には、地元住民や団体、地域のイベントなどとの密な連携の元にさらなる利用促進を図り、より多くの皆様に施設を御利用いただくとともに、何度でも足を運びたいと思っていただけるよう、質の高いサービスを提供していただくことを期待しています。


●開館記念式典

指定管理者
(実際に管理運営する方々)の声
旧古河鉱業若松ビル管理運営委員会の山口委員長と渡辺さんにお話を伺いました。


●お話を伺ったお二人
○指定管理者に応募した理由は
 若松は石炭で賑わった町ですので、石炭に関する建物が非常に多いなか、シンボル的な旧国鉄の若松駅が半月ほどの間に取り壊されたこともあり、古河鉱業ビルが売却、取り壊すという話が出たときに、「若松南海岸通りの歴史と景観を考える会」を、自治会、婦人会、商店街連合会などが集まって平成7年に立ち上げました。その後、シンポジウムを開催し、どのような形で残そうか、ということを話し合いながら、活動を進めてきたなかで、平成10年にそろそろ古河鉱業ビルを市民の掌中に、ということで募金活動をしたところ、約7,400万円もの寄付が集まりました。これを市民の思いです、ということで市に渡しました。このような古河鉱業ビルを保存するための活動を続けてきたことから、管理運営も引き続き地域住民で行いたいという意思から応募しました。

○管理運営で心掛けている点や苦労している点など
 まずは、地域の方々に愛される施設にしたいと、指定管理者一同、一丸となって頑張っています。
 利用者が気軽に使える施設であるように、それを一番心がけていますが、大掛かりなイベントの実施時に、備品の運搬について、倉庫が二階にあることから椅子や机など、備品を運ぶのが利用者にとって大変なところがあり、その点には苦労しています。今後、行政の方とも相談しながら、より利用しやすい施設になるようにしていきたいと考えています。

○地域との関わりは
 地域住民の方で一度利用した方には、また来たいと言われて大変喜ばれています。古河鉱業ビルの外側から見た感じが高尚な建物というイメージがあり、敷居が高いというふうに写る部分がありますが、実際利用すると、市民センターと同じ感覚で使えるということを認識してもらうことができて、次の利用につながっています。料理の持込みが可能であることから、歓送迎会、忘年会などにもよく利用されています。
 利用していない地域の方のなかにも、大学の卒論の発表会をやりたい、アートのワークショップをやりたいなど、古河鉱業ビルを利用してやってみたいことのイメージを膨らませてくれている人が何人もいます。
 また、イベント開催時には、古河鉱業ビルの駐車場だけでは駐車スペースが少ないため足りませんが、地域の会社や住民に協力してもらって駐車場を無料で提供してもらっています。

○今後の課題や取り組み
 古河鉱業ビルを若松の情報発信の拠点とするために、若松区内や北九州市内の情報を集約し、発信する事業をこれからどんどん展開していきたいと考えていますが、費用的な関係でそのための人材確保はむずかしい面があります。これからも市と相談をしながら、よりよい事業展開を行っていきたいと思います。


●若松南海岸通りと古河鉱業ビル

●大正時代を偲ばせるランプ

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